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「あやめの過去に……まだ雪花であった頃のあやめに、一体何があったんだ」
秋人は赤い鬼に向かって問い掛けた。
斎家に残る文献には、雪花御前の末路について書かれたものはない。
分かっているのは、初代宗主との戦いに破れて誓約を交わした鬼姫が、彼に従って京の屋敷に同行し、共に住まうようになった--そこまでだ。
「君たちの家の記録にどうあるかは知らないけれどね、きっと真実は伝えられていないと思うよ」
朱羅に代わって答えたのは、宗一だった。
「真実が、伝えられていない?」
「…うん。多分ね、あくまで僕の予測だけど。あの当時、御前のお心を…そして起こった出来事の真実を、知る者はごく一部だったんだ。僕も本当のところを全て知っているわけじゃあない。斎家の人間でその出来事に関わっていたのは、凪と、あともう一人だけ。…でも、彼らがその出来事を記録として残すだなんて、思えないんだ」
宗一の言葉は抽象的で、言っている事の意味を全て理解する事は難しかった。
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