選びとる道

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「私は、もう二度と同じ後悔をしたくはない。二度と--…」 赤い鬼が呟いた、その時だった。 【……朱羅…】 何処からか、彼の名を呼ぶ声が響いた。 【……朱羅……朱…羅…】 「--御前!?」 その声は確かに、彼の最愛の主の呼び声だった。 空気の震動により聞こえる音ではない。 「あやめの声が、聞こえるのか?」 秋人の問い掛けに、朱羅は顔を上げて二人を見た。 「…聞こえぬのか?」 「聞こえないよ、全然」 宗一が肩をすくめて見せる。 だが、気のせいではない。 聞き間違えるはずがない。 「御前が、呼んでおられる」 【朱羅……応えて。私を、呼んで…】 「はい」 彼の腕の中、眠るあやめの唇は動かない。 けれど間違いなく、彼女が自分を呼んでいる。 呼ぶ声が、聞こえる。
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