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◇ ◇ ◇
「毎日毎日ご苦労な事だね」
少女の寝室を出た赤い鬼に、一人の青年が声をかけた。
腕を組んで壁に身を預け、彼は読めない笑みを浮かべている。
やや茶色がかった柔らかな髪に、中性的な顔立ち。
彼は人としての名を、睦美 宗一といった。
「そうやって毎晩君が気を分け与えていなけりゃ、死んでしまうものね」
赤い鬼――朱羅が、血のように赤い瞳に冷たい光を宿して、横顔で彼を見る。
「しばらく見ぬ間に低俗な趣味を持ったものだな、浅葱。覗きなどしていないで、少しは御前のお役に立つ事を考えたらどうだ」
青年はその視線を受け、肩を竦めておどけて見せた。
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