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「その名で呼ばれるのは、久方ぶりじゃ」
今までとは明らかに違う声音で言って、彼はニヤリと笑う。
その瞳は妖しく青い。
「けど、今の名は宗一だよ。朱羅」
元の声に戻って青年がそう言うと、赤い鬼はふいと顔を背けた。
「別に、そなたの名などどうでも良い」
「冷たいなぁ。共に御前に仕える同志じゃない?」
「―――志が同じでない者を、同志とは呼ばぬな」
宗一は心外だという顔をする。
「失礼な。僕だって彼女の事は心配してるよ。まぁ、確かに君の気持ちとは少し違うかもしれないけど、それはお互い事情が違うんだもの。しょうがないよ」
彼は壁から放れ、突き当たりにある小窓から夜空を覗き見た。
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