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車の屋根に水が落ちてくる音がやけに大きく聞こえる。地下水が染み出て落ちてきているのだろう。余計な言葉は恐怖心を煽るだけだ。黙って通り抜けるのを我慢するだけだ。
「何だよ。何もなかったし。」
トンネルを抜けると原田が口を開いた。
多賀も軽口をたたく。本当は怖かったのだ。車はゆっくりと霧の中をカーブしながら坂を下り始めた。途中でカラカラカラカラと乾いた音が聞こえ始めた。
「枝が絡まったのかも。取ってくる。」
停車し多賀が車の下を見に降りた。手で取れないようで少し動かすからと前後に動かしては、降りて確認していた。やっと手に入れた車に傷がつくのは嫌なのだろう。原田の冗談を聞きながら車内で待った。
トンネルを抜け数百メートル進んだことで、すっかり安心してしまっていた。多賀はなかなか枝が外れないと何度も車を動かし続けた。原田も途中で降りて一緒に枝を取る作業に加わった。
車内で私と麻紀は坂を下ってしまってからにして欲しいけど言えないよねと小声で話した。
もう一度バックすれば取れそうだと多賀が運転席に戻ってきた。少し強めにアクセルを踏み、ガクンと車体が大きく揺れた。
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