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空調の温度を下げて汗がひくのをまった。脱輪のタイミングで枝も外れたようだ。後は不気味な道から抜け出すだけだ。
「しかし驚いた。心霊スポットで事故ってシャレにならない。しかも心霊関係ないし。」
原田が多賀をからかい始めた。整備された道路に口を開けている手掘りトンネル、その脇にあるお地蔵さまと手押し車。さらに夜の雨と濃い霧で雰囲気だけは抜群に恐ろしい。脱輪で崖に落ちるかもという別の恐怖も味わって、心霊体験はしていないけれど怖い思いはしたのだからこれで充分だろう。
「とりあえず、国道に出ようよ。」
まだカーブが続く細い道を下って行かなくてはならない。霧だって濃いままなのだ。注意しなければ今度こそ崖から真っ逆さまになるかもしれない。下りはアクセルを踏まず、エンジンブレーキを利用しながらゆっくり下り始めた。
道路の上に被さってきている木から雨水がバラバラ落ちてくる。視界が悪いので水にまで驚く始末だ。
だんだん、国道が近づいてくるとトラックの音が聞こえるようになった。
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