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「ぼ、僕、妹さんに謝らないと!」
それを聞いた由也はきょとん、という顔をした。
「何で?」
「な、何でって! 僕は毎日のようにこの家に入り浸って、彼女からお前を横取りしてたようなもんだろ? だから……」
「ああー」
由也はくくっと小さく喉を鳴らして笑った。
「なあ慧。ウチの飯、旨かった?」
「え? あ、ああ……」
突然の質問に、僕は少し面食らった。
「お前を最初ウチに泊めた時は、本当に仕方なくだったんだけどな。その後は、お前が来てくれる事に俺は感謝するようになった」
「感謝」と言う言葉に、頭の中が混乱する。
「妹はお前が来るようになってから明るくなってさ。俺達の為に料理を作って、俺達の馬鹿話をこっそり聞いて、それが楽しいって言うんだ」
「え……え?」
由也が作ったと思っていた料理は、全部妹の結菜が用意してくれたものだった。
それはいいとして……会話! 男同士の馬鹿な会話しかしていなかったのではないか?
それを彼女に聞かれていたかと思うと、何だか僕は急に恥ずかしくなった。
「俺の話はそれだけ。後はお前の自由にすればいい。でも取り敢えず、一度妹にちゃんと会ってやってくれないかな」
本来、それが僕の目的だった。彼女と面と向かって話がしたいと。
その為に、僕はこの家へ通い詰めていたのだから。
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