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「君もさっき言ってたよね。僕はもう君の顔を知っている。隠す必要なんてないんだよ」
そう言って静かに結菜へと近づき、そっとウサギのぬいぐるみに手を掛けた。
思いの外するりと彼女の手が離れ、その素顔が露わとなる。
紫色に焼けただれ、醜く引きつったもう半分の顔――
「もうやめて……お願い見ないで」
そう懇願する彼女を、僕は自分の腕の中へと抱きすくめた。
何故だか、そうしたい自分がいた。
「分かった。見ないから、このまま話を聞いて」
結菜の動揺が、その鼓動に乗って僕へと伝わって来る。
「ねえ、君は僕がこの家に来るのを楽しみにしてくれていたの?」
結菜はこくりと小さく頷く。
「あなたの声が好きです。あなたのお話も。私のお料理を誉めてくれるあなたも。今日初めて見たその顔も、声と同じで想像通りとても優しかった」
「僕も、今日やっと君を知れて嬉しい。こんなに可愛い声をしている事も、あの美味しい料理が、実は君が作ってくれていた事も今日初めて知ったよ。それに、君のこの顔を見ても、僕の気持ちは何も変わらなかった」
彼女の肩が小さく震える。
「それって……」
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