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「それってさ、やっぱ両想いってやつだよな!」
二人の間に、そんな言葉が飛び込んで来た。
僕らは思い切り動揺して、お互いの体をべりっと引き剥がす。
「お、お兄ちゃん……!」
「ああごめん、やっぱ心配でさ……でも、言った通りだろ? 俺の親友はこういうヤツだって。自分の母親の勲章を、あれだけ自慢するようなヤツだからな」
母の勲章。それは母の顔に残る火傷痕を意味する。
幼少時、僕の家は火事になった。
母は自分の身も省みず、炎の海の中に取り残された僕を助けに入った。
顔半分を焼かれながらも、必死に助け出してくれた。
母は僕に言った。
これは私の勲章だから、自分の負い目ではなく、誇りにして生きて欲しいのだと。
それが結菜を難なく受け入れられた理由だとすれば、やはり僕は母に感謝をせねばならない。
「それで? 二人は付き合うの? あ、いっその事、お前この家シェアしない? こんな広い家、二人だと有り余っちゃって! もうこの所ここに住んでるようなもんだしさぁ」
イケメン兄貴が一人でどんどんと話を進めて行く。
僕と結菜は同時に顔を見合わせると、思わずクスリと口元を綻ばせた。
「え、ちょっと待ってよ。本当にそれでいいなら、僕はその話に乗っちゃうよ?」
僕の言葉に、満面の笑みを浮かべる兄妹。
由也の目が微かに潤んで見えるのは、きっと見間違えではない。
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