face

6/15
前へ
/15ページ
次へ
 僕はとうとう、彼女の事を由也に切り出した。 「なぁ。お前、妹がいるよな?」  それを聞いた途端、彼は怪訝な顔をした。 「あ……? 何だって?」 「いや……実は、見たんだ。お前の家に、凄く綺麗な女の子がいるのをさ。だから」 「どういう事だ? どこで誰を見たって?」  由也は険しい顔つきで、問答無用に切り込んでくる。  彼の反応を見て、どうやら僕は迂闊な事を言ってしまったのだと、その時初めて気付いた。 「ご、ごめん! 前に泊めてもらった時、彼女の部屋のドアが少し開いてて明かりが漏れていたものだから……その、つい。でも本当、顔半分がたまたま少し見えただけで」 「半分……」  僕の言い訳を聞いた彼は、少し間を空けてからこう言った。 「お前、夢でも見たんじゃないのか?」 「は?」  それは僕にとって、余りにも意外な言葉で。 「い、いや夢なんかじゃ……」 「うちには妹なんていない」  由也はきっぱりとそう言い切った。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加