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深夜、僕は突然の寒気に襲われて、微かに目を開いた。
由也が置いて行ってくれたのだろう。足元のフットライトのお陰で、周りがぼんやりと仄明るい。
彼が去り際に掛けていってくれた毛布が、床に落ちているのが見える。
だが、拾おうにも体が全く言う事を聞かない。
仕方なく諦め、寒さに震えて縮こまっていると、
ふわり
毛布が再び僕の体へと掛け直された。
由也がわざわざ様子を見に来てくれたのだろうか?
そう思って、僕はまたうっすらと目を開けた。
やはり人影が見える。けれどそれは……
「……っ!?」
驚きのあまり、思わず僕は叫びそうになった。
その衝動を懸命に堪え、寝たふりを決め込む。
暫くの間、その人影は僕の傍にじっと立っていたが、優しくそっと毛布越しの僕に触れた後、静かにリビングから去って行った。
しんとした静けさの中、自分の心臓の鼓動だけが早鐘のように高鳴っている。
一人残されたリビングで、僕はようやく全てを理解した。理解せずにはいられなかった。
毛布を掛け直してくれたのは、由也ではない。
この家にはやはり、もう一人いたのだ。
彼の吐いた悲しい嘘に、僕は溢れ出る涙を一晩中堪えきれずにいた。
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