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「おはよう慧。昨日はちゃんと眠れたか? ここ寒かったろ」
翌朝、二階から降りて来た由也が、そう僕に声を掛ける。
「おはよう、大丈夫だよ。毛布ありがとうな」
「潰れるまで飲むなよなー。重くて上まで運べないんだからさ」
笑いながらキッチンに入ると、彼は手際良く朝食の支度を始めた。
いつも入り浸っているこの家の、最近見慣れた光景。
一人暮らしみたいなもんだからと、由也は家事の一切を完璧にこなす。
そんな彼に、僕は思い切って鎌をかけてみた。
「そう言えば、一度様子を見に、わざわざ下りて来てくれたよな」
「え? あ、ああ、そうだよ」
やはり、曖昧な返事だ。
「でも、毛布を掛け直してくれたのは……」
トン……、由也の野菜を切る手が止まる。
「もしかして、見たのか? あいつを……」
「うん。今度は……全部。やっぱり妹なんだろ? あの子」
彼は一呼吸置いて「はあ」と、深い溜め息をもらした。
包丁を置いてキッチンから出て来ると、ストンとソファに居る僕の隣に座る。
「もう、ごまかしても仕方がないな。そう、あれは俺の妹の『結奈(ゆいな)』だ。妹がどうしてああなったのか、お前には話すよ。その後の判断は、お前の自由だ」
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