30人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
やがて薄暗い視界の先に、漢方薬局の狭い間口が見えてくる。
「時の流れに竿を立てることが己の存在意義」と主張するかの如く、古ぼけた店構え。
幼少期の記憶と寸分違わないその有り様に、この薬局の店主が連想されて暗い溜息が漏れる。
半世紀分の埃にまみれて白く煙ったガラス戸を開き、薄暗い店内へ踏み入った。
あくまで静かな足運びで、剥きだしの床を慎重に踏み締める。
「遅かったな」
「そっちはまだお迎えが来ないのか、爺さん」
「この前も同じ台詞を聞いた。芸がないことだ」
最初のコメントを投稿しよう!