1. 象棋

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 やがて薄暗い視界の先に、漢方薬局の狭い間口が見えてくる。 「時の流れに竿を立てることが己の存在意義」と主張するかの如く、古ぼけた店構え。  幼少期の記憶と寸分違わないその有り様に、この薬局の店主が連想されて暗い溜息が漏れる。  半世紀分の埃にまみれて白く煙ったガラス戸を開き、薄暗い店内へ踏み入った。  あくまで静かな足運びで、剥きだしの床を慎重に踏み締める。 「遅かったな」 「そっちはまだお迎えが来ないのか、爺さん」 「この前も同じ台詞を聞いた。芸がないことだ」
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