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1. 象棋
曇天のチャイナタウンは、昼食時を過ぎてもそれなりの賑わいを見せていた。
観光客向けのぼったくり店が並ぶメインストリートを避けて、裏通りに入る。
小柄な痩身を地味な服装で包み、髪も少し伸びた冴えない男。そんな僕に目を留める者は、誰もいない。
軒先に小さな座卓を出して、象棋(シャンチー 中国将棋)に興じる爺さんが二人。盤面にチラリと視線を向けながらその横をすり抜けて、路地に入った。
途端に狭くなる道幅。
生ゴミの腐臭を嫌って口で呼吸しながら、細道をしばらく辿る。足下の地面は常に濡れていて、雑な仕上げのコンクリート舗装に苔が色濃く蔓延っている。
頭上に渡された物干し竿に、住人達の肌着が小汚く揺れていた。
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