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右大臣の娘として。また、左大臣の長男の妻として
私は右大臣の娘、四女。「四の君」と呼ばれているわ。
夫はあの光源氏の好敵手兼親友の「頭中将」と言えば分かるかしら?
頭中将は役職名よ。光源氏の正妻、葵の上の兄でもあるわ。
真の名を知っているのは、両親と本人のみ。
正直、気にならないって言ったらウソになるわね。
だって、同じ立場なら呼び名が被る事もあるし、
住んでる場所までが同じだったら、
呼び名をつけるのも一苦労だもの。
上流階級の女はね、一見華やかに見えるけど…
実際は男の政治、出世に利用されるだけの傀儡よ。
身分が低くなればなるほど、
生き延びるには男の地位と財産状況が重要。
より上級の男を狙うには、美貌、知性、楽器の上手さ、歌の上手さ
そして夜のお勤めの上手さが決め手になるわ。
だから、皆必死に女を磨くの。
結婚したら、妻は夫が通ってくるのを待つだけ。
当然、男はあちらこちらに女がいる訳だから、
毎晩来たり、妻の家に一緒に住んだりなんてあり得ないわね。
上流階級になればなる程、正妻(北方~きたのかた~)の他に
側室やらなにやら沢山いるから。まぁ、色々めんどくさい訳よ。
夫は左大臣の長男。私は右大臣の娘。
分かりやすい「政略結婚」よね。
父から話が来た時は、正直気が進まなかったわ。
でも、女は受け入れるしか道は無いもの…。
夫の事は、前々から女房達の間でキャーキャー噂になってたし、
全く知らない、て訳じゃなかったけどね。
結婚して初夜で初めて互いの顔を知る、なんて事当たり前だったから。
私は運が良かった方かもね。
夫は光源氏に勝るとも劣らない美貌で、知識、歌、舞も極上。
何より、背が高くて楽器の名手で、それに関しては光源氏よりも上かも、
て噂だったわ。
…まぁ、見かけが良くて頭脳、嗜みが極上なら良いか。
それが私の正直な感想だったわ。
だって、
どの道結婚なんて、好きな人となんか結ばれる訳ないもの。
目いっぱいの愛の半分程度、
互いを好きになれたらならそれで良いんじゃないかしら、
それにね、なまじ好きな人と結婚なんかしたら大変よ!
だって、夫が側室を持ったり、あちらこちらに愛人を作るのよ?
耐えられないじゃない!
だからね、好きじゃない人と結婚した方が楽よ。
だって、好きじゃないんだから、
夫が他に何人女を作ろうが気にならないじゃない!
だから、お互いが目いっぱいの愛じゃなくて、
半分程度の愛。
それが自然でいられると思うの。
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