オシエテアゲル

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 ぴちゃっ……、ぴちゃっ……、ぴちゃっ……。  何の音だろう? ゆっくりと……、それは、何秒かの間隔を置きながら私の耳元に近づいてきた。  三日も続いた定期テストからやっと解放されて、今夜からはぐっすりと眠れる算段だったのに台無しだ。  ぴちゃっ……、すう……、すう……、すう……。  二階にある私の部屋のドアを開けると、廊下のすぐ左手には洗面所がある。最初は、そこの蛇口を閉め忘れたのかと思っていた。  さらに耳をすますと、水が滴(したた)るような音に加えて、何かの息遣いのようなものが交じっていた。  蛇口をわざわざ確認しに行くのが、面倒くさいのもあった。でもそれ以上に、怖いのがあった――得体の知れない何かの気配を感じていたからだ。  私は、普段から部屋を真っ暗にして寝ることはない。暗闇の中に自分がぽつんと身を置いているというだけで、極端なまでの恐怖感を感じる――俗に言う「暗所恐怖症」だ。  だから、枕元のすぐ近くには電気スタンドが置いてあって、快眠を妨げない程度の淡い光を一晩中放っている。
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