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ぴちゃっ……、すう……、すう……、すう……。
何かの臭(にお)いまでしてきた。まるで腐った水のような、ずっと昔に小学校の理科室で嗅(か)いだことがあるようなヤツだった。
音と気配が少しずつ近づいてくるにつれて、その臭いが一層強くなってきた。
水の滴るような音。息遣いみたいなもの。そして、腐った水のような臭い。
体は、ぴくりとも動かなかった。動かしたくても、動かなかった。それでも体全体が小刻みに震えて鳥肌が立っているのだけは、感覚的にわかった。
それとは対照的に、「目」は開こうと思えば開けそうだった。でも、絶対にそういう気にはなれなかった――見ちゃいけない何かが、容赦なく視界に入ってくるのは間違いなかったからだ。
ぴとっ……。
「ひっ……」
私は、囁(ささや)くようなか細い声で悲鳴を上げた。何かが、私の右手の甲に触れたからだ。
濡れた感じの細い糸みたいなものが何本も……。いや、これは、もしかしたら髪の毛?
気が狂いそうだった。そして、そう感じながら頭も体も悶えているうちに、私は徐々に意識を失っていった。
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