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それにしても、いいこと聞いたな。健太もオレ以上に生意気だし、後で会ったら『お前って遅刻するなんて本当にマセてるよな』って言ってやろう。アイツきっと意味も分からず、きょとんとするだろうな。
お姉ちゃんに「それって、ほめ言葉?」って聞こうとした。だけど、その横顔を見た瞬間、オレは声をかけるのをやめた。そっと口を閉じて、お姉ちゃんと同じように目の前の景色をながめた。
空には夏真っ盛りの色の濃いブルーが広がっていて、そのど真ん中に大きくて真っ白な入道雲がでんと構えている。今すぐにでもプールに入りたくなるような心おどらせる光景なのに、オレの胸はざわついていた。
「ねぇ」
口を開いたのはオレ。
「ん?」
「なんでアイスくれたの?」
「んー、だから食べきれないし、溶けちゃうともったいないし」
お姉ちゃんはさっきと同じことを言って、オレに微笑んだ。
でも知ってる。オレ気づいちゃったんだ。
さっきお姉ちゃんが悲しそうな顔をしていたのにさ。
というか、知ってたよ、オレ。最初から。
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