君の半分

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君の半分

 放課後の教室には、よく隣の席の女の子が残っている。  その子は学級委員長で、気の弱い女の子だ。たぶん委員長なんていうのは彼女の柄ではないのだろうけど、入試の成績順で学級委員は決められてしまうからしょうがない。  それだけ彼女は成績が良くて、当たり前のように真面目で、責任感が強くて、人からの頼みごとを断れない。  今日も机の上に広げられた紙の束は、たぶん彼女がやらなければいけない仕事ではない。本当は他にやるべきはずの人がいるのに、彼女はできるからという理由だけで頼まれて、そして引き受けてしまう。  他の人よりできることも、誰かから頼りにされることも、一生懸命頑張ることも、言葉だけ聞けばとてもいいことだろう。  でも、夕暮れの教室で一人紙の束を見つめてペンを走らせるこの光景は、とても綺麗で絵になるけれど、ちっとも好きにはなれそうもない景色だった。 「小倉さん、今日も頼まれごと?」  ただみんなが帰るのを待つためだけに校舎をふらふらと一周してきて、教室に戻ったところで声をかける。高校に入学してから、いつの間にか日課になっている行動だ。 「……うん」     
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