君に触れるということ

「潔癖症、というのとは少し違うんだけど」

どういうこと、とわたしは尋ねた。

「私はただ、触れたり触れられたりすることを制限しているだけだから」

制限。

「たとえば君は、誰とでもキスできる？」

できないと思う。そう答えると、すぐに次の問いが来た。

「では、手を繋ぐことは？」

人によるけど、大抵の人とはできると思う。わたしの答えに、そうだね、と彼女は言った。

「でも手と手の接触はよくて、唇はだめだという、その違いはどこにあるのかな。互いの距離は、どちらの場合もゼロだ」

確かにそうだと思った。身体を触れ合わせているという点でいえば、どちらも同じことだ。

「セックスと手を繋ぐことは、もちろん別の行為だけど、ある意味では同じことだよ。私は誰とでもセックスしたりしない。そして、誰とでも手を繋いだりはできない。たとえそれがほんの一瞬の接触であっても」

そういうことなんだ、と彼女は困ったように笑った。