妄想コンテストに花束を

2/19
前へ
/19ページ
次へ
高校生二年目の初夏。 まだ新品で少しぎこちない制服とギラギラした落ち着きの無い眼で浮き足立つ新入生が目に入ると、つい一年前の自分に重ねて思ってしまう。 眩しいね。そうだよ、君も否応無しに期待に胸焦がし、ワクワクドキドキ夢を膨らませているな。 漫画やアニメみたいなエンジョーイなライフ生活、ドラマのヒーロー、物語の主人公になろうと。そんな妄想をリアルに欲しいなんて思う君は、自分と一緒で少し妄想家だね。分かるよ、中学時代はネガティブライフで友達もろくにできなかったんだろ。 だったら、心機一転、高校デビューだ、明るいハイスクールライフ生活の為なら、努力も惜しまぬと、固く決意せよ。 そう所謂、転生モノと一緒だよ、新しい生活に合わせて、自分を変えよう。 実際自分は、熱望して入った学校では無いにせよ、中学時代とは一新、学業も疎かにせず、勉強を教えてあげられるレベルにと向上心を持った。 交流は広く明るく、特にネクラなイメージから脱却。カラオケやちょっとしたイベントに誘ってもらえるように面白系を演じる。勿論、流行りのアーティストナンバーはネットで網羅。 スポーツは部活動で、しかし、本気の運動部はNG、青春を全て捧げてしまっては元もこも無し。ダンス部にしようと思ったんだけど、不良が多そうで断念、なんかユルそうなキャンプ部にした。 スマホを持ち、ファッション雑誌を読み、床屋をやめて美容院に、歯磨き洗顔ヘアスタイルチェックも入念、さり気なく香る柔軟剤使用。海外サッカーの試合をネットで閲覧。 鉄の意志と、日々弛まぬ努力。 こうして培ってきた、このアイデンティティ。 全ては、この輝かしいスクールライフ生活の為。 今こそ開け、高2夏。 アツク儚いメモリーズっ!
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加