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出刃庖丁のデバ子さん
「ねえ。半分ちょうだい」
「あーだるい」あー、めんどくせー。
「だるいっていうなよ。ほら、せんべい分けろって。それに、半分こにすれば、出刃庖丁のデバ子さん。出るんじゃね?」友達のこいつは、食料忘れて俺よりもめんどくせー。
あー、かったりー。くそっ、どうやったら出刃庖丁握った幽霊に見つかるんだよ。
お盆前の深夜。
K県某所にある墓地で肝試しをやっていた俺達は、この墓地でよく現れる赤いスカートの幽霊を探しに来ていた。
なんでも、右手に血で腐食した出刃包丁を持って、気に入った人間を包丁使って真っ二つにするんだとか。
ついた名前は出刃庖丁のデバ子さん。
「ひどいあだ名ね……」
「出刃庖丁のデバ子ってまんますぎるだろ」
「もはや、悪口の領域にはいってるなぁ。まるで、デブでブサ……」と、ここからの友人の先は、問題発言になりそうなんで口を止めさせてもらおうか。
「ひ、ひどいわ!」
「いくらなんでもひどすぎるだろ」幽霊だからって、さすがにひどいだろうな。
今俺達は懐中電灯片手に、墓地をゾンビみたく徘徊していた。生ぬるい夜風が身体中の汗に絡み、不快指数は上昇中だ。
でも、さんざん探したのにみつからない。
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