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ボヤく様に呟くジュウベイはスコープを外すと裸眼で銃の照星と照門を銃床の方から見つめ調整を繰り返している。やがて日本製の電波時計を見つめた彼は遊底を動かし弾丸を機関室内に送り込んだ。
「岡田のダンナ済まないが、今から暫く黙っていてくれ……」
岡田はジュウベイの目付きが変わるのを見て、まさしくプロフェッショナルが仕事をするモードに入った事を確信する。しかし何故、彼がスコープを外したのか疑問が生じていた。その疑問を見透かした様にジュウベイは口を開く。
「スコープを外した訳が知りたいか?」
ジュウベイの問いかけに岡田の顔色が変わる。心臓をわしづかみにされた気分だ。
「な…、なぜそれを!?」
「"男のカン"だ、ってのは、冗談だが、コレだけ至近距離だと裸眼の方がやり易いんでな」
分かり易い男だと、ジュウベイは思いながら、岡田に答えやるが、本当の理由は"殺意"の照射と伝達に光学機器を使用すると"歪み"が生じるからだ。
純粋な殺意は、恋愛感情のソレにほぼ近い。殺す相手を最大限に敬い慈しみ、そして殺害する。"鬼手仏心"とも言えるだろう。
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