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 弟のダイスケが、車に飛び込んだと聞いてアカリはちょっと待ってよ、と思った。おおよそ予想のつくものではなかった。ダイスケの顔を、アカリは最近みていない。それは、いつも朝練で朝早く出ていく自分の為であったが、とにかく、久しく顔を見ていないものが、いきなり起こした非日常に、何か間違ったことが起こっていると感じた。  一体全体、嘘でしょう。そんな気持ちで、彼女は指定された病室へ向かった。しかし、足を進める度に、電話越しの母の涙声、近づく白い建物のために、いやがおうにもそれが現実であると認めざるをえなかった。 「もうだめだって」 そんな一言で、ダイスケの今後は決まってしまった。真っ白のベッドの上に横たわるダイスケは、事故において必要かどうかもわからぬ心臓マッサージを、若手の研修医の手により受けていた。 「何か変わったことはございませんでしたか」 警察の人間まで出てきており、母はなみだながらに何も、と繰り返す。しかし何度目かに、あと思い至った。 「最近、ご飯を残していたように思います」 みそ汁をあの子はいつも全部飲むのですが、最近は椀の半分残していました。  
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