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あれから一年、月子ねえさんも、こどもも、見つからないし帰ってこない。父と母はわたしをひどく責め、毎日ねえさんの名前を呼んでは泣いているようだ。彼は出会ったころの面影もなく、げっそりとこけた口元からわたしを呪う言葉を吐き出しつづけている。
いったいなにがねえさんの気に入らなかったのだろう。残りものとねえさんは言ったけれど、先に生まれたねえさんのほうが、なんでも先に手に入れていたというのに。
ふと、ソファに座ってなにかを呟いている彼を見つめた。
やっぱり、わたしとねえさんはなんでも「はんぶんこ」じゃないと。
ただひとつ、これだけは半分にできなかったから、ねえさんは彼のちょうど半分が入ったものを持っていってしまったんだ。
「ねぇ、縦に切る? 横に切る?」
「ずるいねえさん、そっちのほうが大きいじゃない」
「あぁでもこれ、うまく半分にならないわ……」
じょうずにはんぶんこできたら、ねえさんきっときっときっと帰ってくる。
そうしたら、またふたりでなんでも分け合いましょう。
わたしは、力いっぱい包丁を振り下ろした。
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