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 そうしてわたしは、彼と結婚した。おなかにこどもがいるせいで、結婚式も、新居への引っ越しも、なにもかもがめまぐるしく、ねえさんと顔を合わせる機会が減っていった。 ねえさんとはんぶんこしていたものたちは、彼のかわりにぜんぶねえさんに置いていった。ねえさんは微笑みを浮かべたまま、なにも言わなかった。  こどもが生まれた日、ねえさんはわたしの好物のプリンを持って、病院にお見舞いに来てくれた。静かに病室に入ってきたねえさんは、ベビーベッドに寝かされたこどもの顔を見て、ひどくしあわせそうに笑った。そんなふうに笑うねえさんを見るのは、はじめてのことだった。 「かわいいわね」 「ありがとう」 「彼に似てるわ」  そのあと、わたしはねえさんに勧められるままにプリンを食べた。まだ食欲があまりなかったから、口当たりのいいそれは、とてもおいしかった。つい癖で残った半分を渡そうとしたわたしに、ねえさんはそっと首を振った。  次に目が覚めたとき、ねえさんも、こどもも、どこにもいなかった。  わたしは、食べかけのプリンの容器を握ったまま眠り込んでいた。いつのまにか現れた母と、看護師さんに揺り起こされたときには、ふたりとも煙のように姿を消していた。  状況を把握できないわたしの耳に、ベビーベッドを覗きこんだ母の悲鳴が聞こえた。  力の入らない体で起き上がり、ふるえる母の手が握りしめている紙を奪い取った。
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