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「ねぇ、縦に切る? 横に切る?」
「ずるいねえさん、そっちのほうが大きいじゃない」
「ねぇ、どうする?」
月子ねえさんとわたしは年子の姉妹で、とても仲がよかった。
月子ねえさんはその名のとおり、長い黒髪と白い肌の、華奢ではかなげな女性で、妹のわたしは淡い色のくせっ毛にくっきりとした二重の、背の高い女だった。まわりにはいつも正反対だと笑われたけれど、ねえさんとわたしはまるで双子のようにともに過ごし、なんでも分かち合って生きてきた。
「はい、陽子。はんぶんこ」
そう、わたしたちは、いつでもなんだってはんぶんこ。
幼いわたしはねえさんについて歩いては、年長の彼女の持ちものを欲しがって泣いた。やさしくて穏やかなねえさんはそれを無碍にすることができず、いつもわたしに半分分けてくれた。そのたびに、ねえさんと秘密を共有しているような気がして、半分渡されたそのものよりも、「はんぶんこすること」がいつのまにか目的になっていた。
おやつのあんぱん。
きれいな色の折り紙。
はじめて買った香水。
ワンピースやハイヒールみたいな、半分に分けることができないものは、一日ずつ交互に使った。ねえさんとわたしじゃ似合う服も趣味もちがうはずなのに、不思議とケンカになることはなかった。わたしが欲しいと思ったものを告げると、ねえさんはいつも微笑んで半分払ってくれた。
いつだったか、競争率が高くてどうしても1枚しかチケットが取れなかった舞台のときは、ねえさんが1幕を観たあと、交代したりしたっけ。
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