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その後も定期的にラップ音は続いたが、これはいつものことなので、気にするほどでもない。
いつもと違うことと言えば……今日は珍しく夕方頃、駅前の占い師に声を掛けられたな。
紫の布が掛かった小さな卓に、見た目も格好も普通のオバサンが座っていた。
やる気あんのかってくらい胡散臭いその見た目の占い師に、目の前を横切る際に声を掛けられて。
『あんた……つかれてるね』
余計なお世話だ。
『よかったら安くしとくから、ちょっと寄ってかない?』
キャバクラの客引きかよ。
俺は仕事も残っていたしソイツを無視して、その場を去った。
あんな奴にカモ認定されるほど、やつれて見えたんだろうか。
情けないもんだ……。
嫌なことは全部忘れて、眠りにつこう……。
……翌、早朝。
不快な音に、また眠りを妨げられた。
今度は、インターホンの音。
来客を告げ、応対を急かすこの音は嫌いだ。
ここ最近だと、最低の目覚めだな。
「誰だよ……こんな朝早くに」
時計を見ると、まだ六時を過ぎたばかり。
外からは扉をノックする音と、俺の名字を呼ぶ声が聞こえてきた。
寝ぼけてふらつく足取りで玄関に向かい覗き穴から外を見ると、スーツ姿の凛とした女性が一人、立っていて。
扉を開けずにいると、定期的に何度でもインターホンを鳴らされる。
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