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少し昔の話をしましょう。
あたしがまだ何も知らずに生きていた頃のお話。
若くして母親になろうとした女性がいたの。
女性というより少女といった方が正しいかもしれない。それくらいに若かったわ。
でも、その人は幸せだった。
その人を受け入れ、共に生きようといってくれた男性がいたから。
ああ、その男性も少年といった方が適切かしら。
とにかく、その人はその言葉をまるでお守りのように大切にしていたの。
"この子と、あの人と、幸せに生きよう"
でも、その人が初めてその子を抱いたとき、その人は一人ぼっちだった。
居なかったの。
お守りのような存在は。
お守りは、別の人の手に渡っていたわ。
"今度はしくじらないようにしないとな"
お守りは、笑っていた。
その人は、泣いていた。
その子も、泣いていた。
ここで話はおしまい。
え? その人はそのあとどうなったかって?
それは、あたしも見ていないの。
さてと、そろそろ行かなくちゃね。
ああ、そうそう。
あたしは、嘘は吐かないわ。
だって、呪いって嫌じゃない。
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