1人が本棚に入れています
本棚に追加
〈笑っちゃうなぁ。どうせ、おっきなビニールとかなんだよね〉
空もかなり暗くなった。少しのんびりし過ぎたかと思いながら携帯で時間を確認する。それから改めて山へと目を向けた。
「あれ?」
目に入った光景に疑問を感じ、思わず声が出た。目を瞬かせ、それでも見間違いではないかと目を擦る。
山が白い。そう感じる。
本来ならば、黒く沈んでいる、山が、白い。
白が、揺らいで見える。
目をすがめると、小さいが、先程と同じように、白い物が舞っていた。
ひらひら
ひらひら
風に吹かれて揺れている。
一瞬前には大きな物が一つだけだったのに、今は、山の中腹から山頂に向けて、無数の小さな物が列をなしている。
〈何? どういうこと? 一体なんなの〉
嫌な感覚が身体に生じる。
急に身体が冷たくなった気がした。
次いで頭に浮かんだ。
これは見てはいけない物だと。
目を逸らせなければいけないと身体の方は感じているが、頭の方は好奇心が勝り、私は身動きが取れなくなった。
嫌に喉が乾く。そう感じた時に自分の耳の奥に大きな音が響いた。
大勢の人の声。
土を踏みしめる足音。
嘶き声。
何かがぶつかる音。
それに、おそらくは断末魔。
最初のコメントを投稿しよう!