第一章 1 緋色のライララルーン

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第一章 1 緋色のライララルーン

第一章  1 緋色のライララルーン その1  ロードリアスの南、国境に近い空を一頭の竜が飛翔していた。  活動期に入って六年。  そろそろ大型の魔獣達が人里に現れ、人間は逃げ惑って都市に閉じこもる頃だが、竜の眼は草原と森が交わるあたりの街道に動きを見つけ、好奇心にかられて高度を下げた。  十頭ほどの岩狼の群れ。  取り囲まれているのは、二匹の人間。  だが、しばらく眺めていた竜は、岩狼が獲物を狩っているのではないことに気付いた。  逆だ。  たった二匹の人間が、獰猛な岩狼を狩っているのだ。  小柄な白っぽい頭と、それより大きめの黒い頭の人間。雄牛ほどもある岩狼の群れを相手に、二匹は見事な連携を見せ、余裕で動いていた。  小柄なほうは俊敏に動いて相手の牙を寄せ付けず、大きなほうは陽気に豪快に剣を振る。  小一時間して狩りが片づいた後、竜は舞い降りて、地上に降り立つ前に人間の声で叫んだ。 「逃げないで!聞きたいことがあるの!」  だが着地してみると、二匹は始めから逃げる気などないように剣を収めて竜を見つめていた。     
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