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小柄なほうはほとんど銀と言っていいほど色の薄いプラチナブロンドの、綺麗な若い雄。そして黒髪の雄のほうは・・・。
竜は驚きの声を上げる。
「あんた!・・・竜ね!」
黒髪の雄はにやにや笑いながら顎に手を当てた。
「はてね。その赤い色は炎のファランドの血統だと思うが・・・あの一族にこんなちっこい雌がいたかね」
ちっこい雌という言葉に銀髪の雄はちよっとびっくりした。
輝く背から真珠の光沢を持つ腹まで赤、紅、朱の微妙に色の違う鱗に覆われ、金と白金のアクセントの入った、生きた宝石のような身体。額に煌めく竜印は深いルビーの赤。
全長十二メートルを超すこの素晴らしく豪華な生き物が、ちっこい雌なのか。
「失礼な奴ねっ!雄の方から名乗るのが礼儀でしょうっ!人間なんかに変身して、竜の作法も忘れたのっ!」
「人間の前で名乗る気はないんでね。ま、仮にレイヴンと呼んでくんな。
しかしあんたもこんなとこに降りるとは不用心だな。
俺たちは大きな隊商の斥候なんだ。後ろに人間共がくっついて来てるぜ。大騒ぎでもおこしたいのか?
人型になれないんだったら見られないよう隠れてな」
「隠れる!たかが人間から隠れるですって?馬鹿にしないで!人型になるくらい簡単よ!」
ぶわっ、と風が逆巻き、竜の姿が消えた。
若い娘が立ち上がる。
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