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私は「戸川のマリカ様」と言われて育った。
父は、戸川自動車の代表取締役社長、祖父は代表取締役会長だった。そして、私の叔父は取締役副社長を務めていた。
いとこの崇と咲のことは良く知っている。
小さい頃は一緒にディズニーワールドに遊びに行ったし、毎年夏は、軽井沢にあるおじいちゃんの山の家に一緒に何週間か泊まりに行くのが恒例の行事だったからだ。
おじいちゃんの山の家に行った時には、崇や咲とよく文句を言っていた。
たまには軽井沢なんかじゃなくて、カリブとかのビーチに行きたいね、って。
でも、おじいちゃんは、カリブは遠すぎるし暑すぎる、軽井沢が丁度いいんだ、って口癖のように言って笑っていた。
小学校の高学年になる頃から、崇や咲とはあまり会えなくなった。
私は、女子大まで上がれる中学校に進学予定だったけど、もう少し大きかった崇と咲は、スイスの全寮制の学校に入っちゃったからだ。
しょっちゅう会えなくなって寂しかったけど、いいことが一つあった。
夏休みになると、軽井沢の代わりに毎年、スイスに行くようになったのだ。
咲たちの学校は湖畔にあり、私たちは一緒に近くの小さな街に滞在して、湖でボート遊びをしたり、馬に乗ったりして夏を過ごしていた。
スイスがあんまりいいところなので、私も咲の学校に入りたい、ってパパに何度となく頼んでみたけど、パパは絶対ダメだって言った。
私は一人娘だったし、こんなに早くからスイスに行っちゃったら、ママが悲しむだろう、って。
パパが一度こう、と決めたことは、私がどんなに我がままを言っても無駄だったけど、それ以外は望む事はだいたい何でも叶えてもらってた。
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