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「審議官には、戸川としては、水素ステーション計画の指示を国交省に仰ぎたいとお伝え頂けないでしょうか」
雨宮の眉がピクリと動く。
「その件は、経産省ががっつり地固めしていると聞いているが」
「佐々倉先生は、国交省に任せるのにやぶさかではないんですよね?」
佐々倉は、あきれたような顔で息子の顔を見ている。
経産省の大臣として、省を説得して国交省に利権を渡せ、ということか。
そんなこと、経産省が黙って承知するはずないではないか!
佐々倉は、水素ステーションの利権を手みやげに鈴木の件を黙認させろ、と雨宮に迫った。
「……戸川も横田審議官への信頼は厚いですから」
佐々倉が誘い水を出すと、雨宮は乗って来た。
「横田審議官なら経産省よりも迅速に水素ステーションの整備を進められると私も信じているんだがね。
ねえ、佐々倉先生?」
ますます苦渋がにじみ出たような顔になる父を、佐々倉はじっと睨みつけた。
佐々倉議員は息子の視線に気付くと観念したように、一呼吸おいて静かに結論を出した。
「確かに、横田審議官は公正かつ正確な仕事で知られた人物だからね」
戸川邦夫と田中の顔に深い安堵の表情が浮かんだのを佐々倉は確認した。
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