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佐々倉はやっぱり離婚したいと思っているのだろうか。「戸川」という重荷をおろして自由に生きたいと思っているのだろうか。
結局私たちの間に愛はないのだから、父が亡き今となっては佐々倉が「戸川」に縁付く必要は全くないはずだった。
私は、バッグの中から離婚届の入った封筒を取り出した。
そこにウエイターが前菜のサラダとパンを持って来た。
「これ……、どういうこと。一応、はっきりと聞いておいたほうがいいと思って」
ああ、私の予定では、佐々倉の近況や「戸川」の内情を少しかじって、心境を聞いてから、もう少しリラックスしてくだけた雰囲気にして、話を切り出すつもりだったのに、頭の中でいろんなことをモヤモヤと考えていたら、いきなり封筒がテーブルの上に載っていた。
佐々倉はすぐには返事をしなかった。
多分、佐々倉もいろいろ思いあぐねているに違いない。
「あ!」と私は急にひらめいた。
「もしかして、今、父の言葉が頭をよぎってる?」
佐々倉ははっとした顔をした。
「私も、いつも父の言葉がこだまして、決断できないでいるから……
あの、佐々倉さん、あなたは、私と離婚したいの?」
佐々倉は、私の目をまっすぐと見つめた。
大きく目を見開いて、射るように鋭く私に視線を向ける。
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