302人が本棚に入れています
本棚に追加
「君は? 万里花はどう思ってる?
離婚したいのか、したくないのか。君自身はどう思ってるんだ?」
「……」
今度は私が無言になる番だった。
「わからない。正直言うと……今のままが一番いいの」
私は、それがズルい逃げだと知っていて、そう答えた。
「……ごめん。オレにはそれがキツすぎてできない。
君のお父さんもしおりもいなくなった今、オレが戸川に関わる意味が見いだせないんだ。
君はオレがいるせいで朝比奈と一緒になれない。
それに、オレが戸川に貢献したところで誰が喜ぶ?」
「あなたは、『戸川』を離れるつもりなの?」
「君と離婚したら『戸川』にはいられないよ」
「だけど、あなたは、『戸川』の一大ピンチを救ったのよ。
あなたがいなくなったら『戸川』はどうなるのよ?」
「『戸川』は立派な大企業だから、どうとでもなるさ」
「じゃ、誰がパンテェールノワールを作るの?
私は、あんなだっさいジャガーが街中を我が物顔で走り回るとか許さないから」
最初のコメントを投稿しよう!