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「何、それ」
「キス。これでいい?」
「いいわけないじゃん。最後だよ?」
すこし不機嫌になった岳に私は笑い出してしまった。
ああー、やっぱり岳が大好きだなーって思った。
岳は、ゆっくりと私の唇に自分のを重ねてきた。
口の中に舌を入れてきてなめらかに動かす。
すべるような動きに、私の舌も反応した。もっと欲しい……
キスだけで納まりそうにないのは私も同じだった。
「グデグデになっちゃうんじゃないの?」
私がからかうように言うと、岳はすました顔で答えた。
「『戸川のマリカ様』は意外と残酷だからそれはないでしょ。
決心がついたらすっぱりとオレを切るでしょ」
岳はやっぱり最高だ。
「決めた。明日別れる。ベッドに連れて行って」
その夜、私たちは何度も何度も抱き合った。
お互いの存在を確かめるように、体中を触ったり、キスし合ったり、抱きしめたり、笑いながらくすぐっりっこをしたり、おしゃべりしたり……
こんなに陽気で愉快なセックスはもう二度とないだろう。
私と岳だけの特別の時間。
次の日、私が目を覚ますと岳はもうどこにもいなかった。
枕元にメモが置いてあった。
必ず幸せになって下さい
私は、このメモに返事が出せないことがとても悲しいと思った。
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