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「ママーーーー、それホントなの?」
親ヤマドリは、塒でこのことを聞いたとたん雛鳥だった頃のパンテラは目を輝かせた。
そうよ。この森の向うの向うの向うのそこ向うのそのまた向うに、1面の水溜り・・・海があるの。
海は、止めどなく波になって、蠢いていてそれはこの世とは思えない位キラキラしてて綺麗でね・・・。
海の側には砂浜が拡がっていて、とっても気持ちいいんだって。
「ふーん。そうなのーーーーー!!」
「ええ、そうよ。」
「いきたーーーい!!」
・・・ママの言うことが本当なら、この森を抜ければ『海』に行けるかも・・・?!
ぱたぱたぱたぱたぱたぱたぱた・・・
ヤマドリのパンテラは、必死に羽ばたいた。
ヤマドリのパンテラはやがて、
森を抜け、
川を越え、
街を霞めて、
・・・『海』ってどんなとこだろ・・・?
・・・『海』なら、いちいち木の実争奪で他の仲間と争いしなくて済むし、キツネやカラスや人間のハンターに虐められることも無いだろう・・・
・・・『海』なら、何も悩み無く生きられるに違いない・・・
・・・『海』に行きたい・・・!!
・・・『海』に生きたい・・・!!
かーかーかーかーかー!!
「なんじゃーーーい!!何でヤマドリが街に来てるんじゃーーーーい!!」
「か、カラスだぁ!!」
獰猛なカラスのコックロは、ヤマドリのパンテラを見つけるなり、執拗に追いかけていた。
かーかーかーかーかー!!
「待てェェェェェェーーーー待たんかいィィィィ!!」
ばさばさばさばさばさばさばさ!!
ヤマドリの短い翼ではカラスの逞しい翼にはどうしても追い付かれるし、しかもヤマドリの長すぎる尾羽が災いして、何度も何度も何度も何度も、カラスの嘴に食らいつかれそうになった。
かーかーかーかーかー!!
ばさばさばさばさばさばさばさ!!
ふと、ヤマドリのパンテラは前を向いた。
キラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラ・・・
「海だぁぁぁぁぁーーー!!」
パンテラの目の前には、太陽の光に輝く1面の大海原が見えてきた。
「ありがとう!カラスさん!!海まで案内してくれて!!」
「かぁ?」
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