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どこで何が狂い出したんだろう。
私たちはずっと、仲の良い友達だったのに。
「易易と触れられて、キスされて、そういうところが無防備だって、桜井先生は言っているんだよ?」
呆れたようにハァッと溜息混じりで言われてしまい、それでようやく気付く。
私は、からかわれてしまったんだ。
けれど、ここは私が怒るところではないと思い、グッと唇を噛み締める。
「それに、もし見られたのが俺じゃなかったらどうしてた?あやちゃんに桜井先生を守れるの?」
諭くんの言う通り、もし他の生徒だったら、間違いなくバラされて全校に広まっているだろう。
立場的にも、高校生の私が先生を守ることなんて不可能だ。
先生の人生を台無しにしてしまうかもしれなかったのだと、今になって気付く。
「そんな泣きそうな顔しないでよ……だから放っておけないんだよ」
彼の口からやけに苦しげに発せられる言葉が、やけに胸に重くのしかかる。
「放っておけないって……っ、どうして……」
「どうしてって、いい加減気付けよ!こうやって忠告するのも、キスをするのも……俺があやちゃんのことをどう思っているかも!」
こんなことが起こるまで、気付けなかった。
一番話しやすくて、一番仲が良い男友達だと思っていたのは、私だけだったなんて……。
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