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第36話
力強い衝撃が背中へと走る。
背中を残りの魔力で覆っていたおかげか、痛みは半減される。しかし、半減されたところで痛みは気をおかしくさせる。
緩んだ剣が振り払われ、左腕をなくしてもなお上に立つシェイルの姿を、ただ見上げることしかできなかった。
横からリルが魔法を打ってくるが、すべてシェイルの髪によって妨げられる。
剣を逆手に持ち、心を狙って突き刺そうとしてくる。
目を閉じすべてを諦めようとした瞬間、首元に下げていたネックレス。人魚の涙が緑色に光り出す。その光は、シェイルの剣をも止め、宙へと浮く。
その光は次第に俺の体を包み込み、何かを与えてくる。
かすかに見えるのは、あの時夢で見た人魚の姿。しかし、あの時のようにはっきりとしているわけではなかった。いるのではないかという微かな希望で見た姿。
身体の心が温まっていくのがわかる。それがじんわりと全身へと血液を流れて伝わっていき、全体が温まっていく。
生きている。
そう感じさせる暖かさだった。
次第にその光は弱まり、人魚の涙は力なく重力に伴って、小石のように黒くくすんで胸元に落ちてきた。
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