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躊躇っていたシェイルの姿は、驚いている様子だったが、光を失いこれ見よがしに剣をつきおろしてくる。
しかし、この暖かさを覚えてしまった以上、頬は上がってしまう。
動かなかった右腕が動き、魔力で無の弾を作り、剣先に当てては振り降りてくる勢いのままそれを無にする。
「なっ…魔力が」
すぐに身をはなし、俺から距離をとるシェイルの表情は、先ほどとは変わり、真剣なまなざしへと変わってきていた。
「これが火事場の馬鹿力ってやつなのかな」
ゆっくりと立ち上がり、自らの周りに魔力を覆う。
取り戻した感覚。にやりとあげた微笑を戻すには時間がかかりそうだった。
それと同時に、これをもう使い果たしてしまうと、もう魔力が戻ってこないのがわかった気がした。
あふれ出てくるこの魔力は自分の物ではない。自分の物は、すでに落下時に使い果たしてしまっている。上限が決められた使い捨ての魔力。
「シェイル…。俺はお前を信じてたよ。だから、俺はお前を殺す。俺が殺す」
振り払われた剣を拾い、右手にしっかりと構える。
地を蹴りシェイルの元へと飛ぶが、それと同時にシェイルも距離を開けるように地を蹴り後方へと飛ぶ。
左手でいくつもの球を作り、投げつける。再度作った剣で振り払うが、それと同時に剣を削る。
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