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銀色の髪、銀色の耳、銀色の尻尾。本当は耳と尻尾は灰色だけど、イルミネーションのせいなのか、ボクの目が不思議な魔法にかかったのか、牙の姿が輝いて見える。
「牙!」
「遅くなったな、ミミオ……」
「牙! 牙! どうして?」
「少し時間が空いたんだ。お前とこのツリーを見たくて寄り道をして貰った」
「牙……」
「お前の耳には雪がよく似合う……」
「や、やだ……」
なに言ってんの、牙の方が似合っているのに。ものすごくカッコいいのに。
ボクは顔の前に耳を垂らしてするすると撫でた。恥ずかしい時や照れ臭い時にはこうすると落ち着くんだ。
牙が近づいてきて隣に立った。長い尻尾がゆっくりと揺れている。
「顔を上げろ、ミミオ。一緒にツリーを見よう」
「う、うん」
ボクは顔を上げて、ツリーじゃなく隣に立つ背の高い牙の横顔を見つめた。
鼻筋の通った男らしい顔立ち。少し疲れているようにも見える。
本当に忙しいのだと思う。
貴重な時間をボクのために使っちゃっていいのかな、って思うけれど、ツリーを見つめる青い瞳にはどこかホッとしたような安らぎが宿っているようにも見える。
ボクとこうして過ごすことで、牙がほんの少しでも息抜き出来るのだとしたら、そうやってちょっとでも牙の役に立てているのなら嬉しいな。そうだったら、ホントに。
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