第1話 海が結んだ縁

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第1話 海が結んだ縁

 お盆の時は海に近づかない方が良い。『地獄の釜の蓋が開く』時で、閻魔も鬼もお休みしていて霊があの世とこの世を行き来している。成仏出来ない霊が、海に沢山いて足を引っ張られやすい。と、よく聞く。  その時期は台風や土用波の影響で、波にさらわれやすい。離岸流が発生しやすい危険がある。海水の温度も下がって来ているので血圧や心臓に負担がかかりやすい。夏の疲れがで出来やすいので特に足を取られやすい。毒クラゲが発生しやすい。実際のところは、これが現実的な原因であろう。  ただ… 海を見ていると時折自分も波の一部になったかのような錯覚を起こす時がある。  これは、一定のリズムを長時間見続けた時に発生する催眠効果のようなものに近いだろう。そんな時に、海に入ってしまったら大変だ。ましてそれがお盆時なら猶更…。  あたしは相沢菜々子。この春高校に入学したばかりだ。 この海は、自宅から2キロほど離れたところにある。自転車ならすぐに着ける距離だ。 比較的穏やかな海だからシーズンともなれば観光客で相当賑わう。  幼い頃から、この海には度々来ていた。保護者の付き添いが必要無くなる時まで、 車でよく遊びに来たものだ。大人達と共に。
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