第2話 当麻、萌恵、そしてあたし

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第2話 当麻、萌恵、そしてあたし

「あんまり似てないのね」 大人たちは、あたしと萌恵を見比べてよくそう言う。 顔ではニコニコしながら。 でも、大人たちの本音はこうだ。 『妹さんは可愛らしいのに。可哀想ねぇ。 ご両親も美男美女なのに、一体、誰に似たのかしら』 もう、慣れっこだ。 小さい時は、自分の容姿なんて気にならなかった。 でも、小学校に行くようになってからは、 段々と、クラス内の子と自分を比較する事を覚えた。 萌が小学校に入学した頃、私は小学校3年。 萌恵の可愛さはすぐに評判になった。 「妹は超可愛いのに、お前ブスだな!」 子供は正直だ。 それが、あたしと萌恵を知ってる人全ての感想だ。 「ちょっと!辞めなよ、可哀想じゃん、菜々子が」 女子達はそう言って庇う。 一見正しい行動に見えるが、可哀想、ね。 『つまり、妹はかわいいけどあたしはブス』 これを認めた上での言動だ。学校の先生もそうだ。 小学校2年くらいまでは、薄々気づきじめていた。 妹と私の見た目の差。どうやら頭脳も、妹の方が上だという事も。 萌が小学校に入学して以来、 あたしは、何もかもダメな部分を持って生まれてきたんだ、 という、知りたくもない事実を知ってしまった。 その時までよく分かってなかった幸せな自分。 両親はあたしと萌恵を比べて 引き合いに出すような事はしなかったのだろう。 よく出来た両親だと思う。 あたしが萌恵に対して思うのは、体が弱い妹の面倒をよく見る事。 なんでも、妹を優先する事。 だって、あたしはお姉ちゃんだから。 萌恵はよく風邪を引いた。そしてすぐに肺炎を起こす。 よく入院した。パパもママも、萌恵にかかりっきりだ。 でも、あたしはお姉ちゃんだから。一人でも大丈夫。 パパもママも、 「菜々子はしっかりしてるから助かってる。 一人で留守番させても安心して任せられる」 て言ってくれた。 誇らしかった。あたしが唯一、褒めてもらえたところだ。
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