第2話 当麻、萌恵、そしてあたし

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それにあたしは元々、うじうじ悩むのは性に合わない。 楽しくて面白い事が大好きだ。 周りがあまりにも萌恵と比較してきてウザイから、 どうせなら思い切り似て無いようにしようと、 腰まで伸ばしていた髪をベリーショートにしてみた。 髪など伸ばして中途半端に女の子らしくあろうとするから、 余計に萌恵と比べられるのだ。 小学校5年になる頃になると、漸く体力がついてきたのか 妹はほとんど風邪をひかなくなった。 その時あたしは中一。バレー部に入部した。 体を動かして汗をかくと、 モヤモヤウジウジ悩んでいた気持ちが吹き飛ぶからだ。 他にも運動部はあったが、バレーにしたのは スパイクを決めた時の快感がたまらなく好きだからだ。 …モヤモヤウジウジ… 当麻は天気さえ大丈夫なら、定期的に日曜日に海に来る。 勿論、あたしも萌恵を連れて海へ行く。 萌恵に体力をつけさせる為、ゆっくりと歩いて。 あたしたちは、そうやって定期的に遊んでいた。 濡れるとすぐ風邪を引く萌恵を考え、真夏でも海水浴はせず 足首をつける程度。 大抵は砂浜で砂山を作ったり、取り止めの無い話をした。 当麻は、思ったことはなんでも口にするタイプだ。 だけど、腹黒さがない。 両親の他に、唯一あたしと萌恵を比べて憐れんだりしない、 対等に接してくれる貴重な友達だった。 そんな彼だから、ストレート過ぎる物言いで 誤解される事も少なくないみたいだけれど、 あたしは真っすぐな当麻の性格が好きだった。 萌恵と自分の容姿の歴然の差に気付いた時から、 当麻も実はイケメンの類に入る事に気づいた。 細身で背が高く、長い手足。小麦色の肌。 涼しげな黒い瞳。長い睫毛。面長の端正な顔立ち。 サラサラの黒髪は ショートカットにしてセンス良く跳ねさせてある。 小4から、水泳部に所属しているそうだ。 …モテるだろうな… そう感じたら、少し胸がザワザワした。
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