第2話 当麻、萌恵、そしてあたし

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あれは、萌恵が小6になった時か。あたしと当麻は中2だ。 透明感が出てきて、益々可愛さに磨きがかかった萌絵。 キラキラした海を太陽を背にして、 あたしと当麻に微笑む萌恵は思わず見惚れてしまうほど、綺麗だった。 初潮を迎え、少女から女へと少しづつ花開いて行く時が来たのだろう。 見惚れていたあたしは、 ふと、隣りの当麻も萌恵に見惚れている事に気づいた。 …なんて、優しい目で萌恵を見つめるんだろう… あんな目で、あたしは当麻から見つめられた事はなかった。 そんな当麻を、恥ずかしそうに見上げる萌恵。 なんて可愛らしいんだろう。ほのかに頬を染めて。 ウルウルした瞳は、さぞかし男心をそそ…る… 「!!!」 その時漸く気づいた。 私は、二人の『お邪魔虫』だった事に…。 ショックだった。 そして今の今まで気付けなかった自分に、腹が立った。 その日を境に、あたしは海辺で遊ぶ二人を 離れたところから見ているだけになった。 はしゃぎつつも、しっかりと萌恵を気にかけ、 彼女が足を滑らせて転びそうになる前にしっかりと支える当麻。 海辺で水をかけあってじゃれ合う二人。 両手で掬った水を空に投げると、 水は水滴になって二人に降り注ぐ。太陽の光に照らされ、 キラキラした光の粒になって。そして小さな虹を作る。 とても幻想的で、二人はまるで、 おとぎ話に登場する姫と騎士(ナイト)みたいに見えた。 …とっても、お似合いの二人… そんな二人を見ている自分が、酷く滑稽に思えてくる。 胸がザワザワしてモヤモヤする。 この気持ちを、どう表現して良いかわからない。 だからあたしは、海を見ていた。 ザワザワモヤモヤした気持ちを胸から切り取って、 海へ投げるイメージをするのだ。 そうすると、波がそのドロドログチャグチャした汚い塊を、 綺麗に浄化して無に返してくれる…。 そんな気がした。 これは、あたしが生み出したオリジナルのスッキリ方法だ。 だからあたしは、海を見ていた。 …ただひたすら、海を見ていた…
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