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平和を脅かす存在
ああ、また来たな。
俺は、ちらりとそれを確認すると、無視して竿先に視線を移した。
ほぼ毎日、その子はやってくる。俺が岩場で釣りを始めると、しばらくしてその子は現れるのだ。
まあ、ほぼ毎日、釣りをしている俺も暇人なのだけど。ようやく俺は、こうして毎日、好きな釣りに明け暮れる平和な日々を送れるようになったのだ。
少し前までの俺は、仕事に追われていた。毎晩毎晩、遅くまで残業を強いられ、精神的にも肉体的にも限界を感じていたのだ。そして、今は、こうして毎日夢のような釣り三昧の日々を送っている。自分の時間なんて皆無だった少し前の自分が嘘のようだ。
ところが、ここ1ヶ月くらい前から、俺が釣りを始めると、必ず男の子が岩場に現れ、遠くから俺をずっと見ているのだ。年の頃は、小学3・4年生くらいだろうか。別に、男の子が見ているのは不思議ではない。俺が不可解に思っているのは、その時間帯だ。ちょうどこの時間帯なら、子供は学校に行っているのではないだろうか。しかも、その男の子は、毎日同じ服を着ている。
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