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服など、最初は気にならなかった。ところが、ほぼ毎日俺を遠くから見ているので、気になりだしたら、服がまったく変わっていないことに気付いたのだ。服というのは、ずっと同じものを着ていれば薄汚れていくはずだが、その子の服は、まったく薄汚れることはなかった。
正直、薄気味が悪かった。学校にも行かず、ただ毎日俺を遠くから見つめているだけ。しかも、毎日同じ服で。そんなことを考えていたら、なんだか、その子の様子も、青白く不健康に見えて、これってまるで。
-幽霊のようではないかー
そう考えると、俺はだんだんと気持ちが悪くなってきて、今日は釣りをする場所を変えたのだ。すると、男の子は現れなかった。俺は、ほっと胸をなでおろした。ようやく心置きなく釣りができる。やはり遠くからずっと見つめているだけの存在は気味が悪いし、だいいち子供があまり好きではない。
ところが、そのあくる日、男の子は現れた。俺は、心臓がつかまれるほど驚いた。何故?どうして俺についてくるんだよ。そんなことを考えていると、その男の子はこちらに向かって歩いてきた。俺の心臓は早鐘のように鳴った。こっちに来る!
「おじさん、こんなところで何してんの?」
ついに、俺は話しかけられてしまった。
俺はしばらくして、答えた。
「釣りだよ。見ての通り。」
ドキドキしていた。この子は本当に人間なのだろうか。
「ふーん、何か釣れた?」
男の子は海を覗き込んだ。
「いいや、まだ何も。君は、学校に行かなくていいの?」
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