8人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は男の子に問いかけた。
男の子は悲しそうな顔をした。
「学校・・・行けないの。」
一言そう言うと、口をつぐんでしまった。
「・・・どうして?」
俺はその先を聞いてはならないような気がしたが、つい口をついて出てしまった。
男の子は生気のない、真っ黒な瞳で俺を見つめた。
井戸の底を見たような、真っ黒な空洞のような瞳。
俺は、全身が薄ら寒くなった。
「ヒロト!」
遠くから、女の声がした。
青い顔をした、俺と同じくらいの年の女が慌ててこちらに走ってきた。
すると、男の子は振り向いて女の方を見た。
「ヒロト!ダメじゃない!勝手に外に出かけちゃ。心配するでしょ?」
幽霊ではなかった。
俺は、一気に脱力した。なんだ、脅かすなよ。俺がこの一ヶ月くらい抱えた不安はなんなんだよ。
でも、この子は何故、学校に行ってないのだろう。病気には見えない。
今、巷で問題になっている、不登校ってやつか。
服も同じなのはどういうことなんだろう。ただ単に、こだわりがあるってやつか。
そういう精神の病も聞いたことがあるような気がする。
俺は今度は、男の子に対する、同情の念が沸いてきた。
俺にもそんな次期があったな。出社したくない。出社拒否症とまでは行かなかったが。
最初のコメントを投稿しよう!