平和を脅かす存在

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俺は男の子に問いかけた。 男の子は悲しそうな顔をした。 「学校・・・行けないの。」 一言そう言うと、口をつぐんでしまった。 「・・・どうして?」 俺はその先を聞いてはならないような気がしたが、つい口をついて出てしまった。 男の子は生気のない、真っ黒な瞳で俺を見つめた。 井戸の底を見たような、真っ黒な空洞のような瞳。 俺は、全身が薄ら寒くなった。 「ヒロト!」 遠くから、女の声がした。 青い顔をした、俺と同じくらいの年の女が慌ててこちらに走ってきた。 すると、男の子は振り向いて女の方を見た。 「ヒロト!ダメじゃない!勝手に外に出かけちゃ。心配するでしょ?」 幽霊ではなかった。 俺は、一気に脱力した。なんだ、脅かすなよ。俺がこの一ヶ月くらい抱えた不安はなんなんだよ。 でも、この子は何故、学校に行ってないのだろう。病気には見えない。 今、巷で問題になっている、不登校ってやつか。 服も同じなのはどういうことなんだろう。ただ単に、こだわりがあるってやつか。 そういう精神の病も聞いたことがあるような気がする。 俺は今度は、男の子に対する、同情の念が沸いてきた。 俺にもそんな次期があったな。出社したくない。出社拒否症とまでは行かなかったが。     
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