平和を脅かす存在

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 ここから飛び降りれば、俺は楽になれる。俺は、もうこの世界から解放されたかったのだ。毎日毎日、怒鳴り散らす上司。仕事を頼めばすぐに嫌な顔をする部下。仕事もできないくせに、一人前に権利だけは主張する、今時の若者。いわゆる中間管理職の俺は、もう人生にウンザリしていた。恋人もなく、両親もとっくに他界し、俺は一人だった。誰も相談する相手もいない。もう、全てが限界だったのだ。 「いるんだよ、本当に。そこに、おじさんが居るの。お母さん、信じて。」 男の子は母親に手を引かれ、帰って行った。  俺はほっと溜息をついた。明日からあの子は、もう来ないだろう。 俺にはやっとまた明日から、あの肉体から解放された平和な日々が訪れるだろう。
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